自作真空管ギターアンプ製作 ~SHINOSのスタート2~

LINEで送る
Pocket

これまでの話はこちら  「自作真空管ギターアンプ製作 ~SHINOSスタート1~」

THE MODSの森山達也さんからのオーダー

僕は1998年からTHE MODSのテクニシャンを担当していました。Vo&Gの森山さんは、ツアーの移動中などに僕がギターアンプの本を読んでいつも勉強していたのを知っていたのです。

ある日、「小さいシンプルなギターアンプがほしいんよ。」と森山さん。

僕は「わかりました。作ってみます!」と即答しました。

そして、THE MODSの森山達也さんに作ったギターアンプ(M-13)がSHINOS AMPとして初めて世に出たのです。

この頃はまだ、SHINOSというロゴすらアンプに付いていませんでした。

現在はキャビネットを作り直して、SHINOSロゴもついています。

仕様はパワーチューブに6V6が2本、整流管にGZ34、プリチューブにECC83を3本。とてもシンプルなアンプです。

THE MODS 森山さんはシンプルなギターアンプが必要でした。複雑なコントロールは好みません。

そして、この森山達也モデルをベースにして作ったのが、SHINOS AMPのフラッグシップモデル「Luck6V」です。

ここから少しずつ、SHINOS AMPをプロミュージシャン達が愛用してくれるようになりました。

SHINOS AMP ARTIST

この「Luck6V」は、現場でギターテクニシャンをしている自分のアイデアが詰まっています。

先ずはアンプのバックパネルに、デジタル表示のバイアスメーターを付けたことです。

これにより、ユーザー自身、あるいは現場のギターテック達が、自分でバイアス調整することができるようになりました。

自分自身も、現場でギターテックとして仕事をしているときに、ギターアンプの真空管が壊れてしまい、予備の真空管はあるけど、バイアス調整用の測定器が無いので、バイアス調整ができないということがありました。

ならば測定器をアンプ自体に付けてしまえばいいのでは?そしたら誰にでもバイアス調整が可能になる。真空管を交換するのにわざわざ、ショップに出さなくても良いということになります。

そして、ハンドルの落とし込み。

現場では、アンプの上にハンドルがあるので物が載せれないと困るときがあります。

例えば夏フェスなどでは短時間でステージの転換をするのですが、エフェクターボードの置き場所に困ります。アンプの上に置けると非常にスムーズに転換できるんです。

その時にハンドルが邪魔にならないように落とし込んでいます。

こういうことって現場で思いつくんです。

SHINOS Luck6v ができるまで

しかし、とんとん拍子のように感じるかもしれませんが、今の「Luck6V」ができるまでは、そう簡単にはいきませんでした。

先ずは自宅のマンションでアンプを作ること自体が無理があります。工房を借りることにしました。最初は新高円寺のマンションの1階の小さな工房です。そこでアンプを作り始めました。

アンプを作るのに一番場所を必要とするのは、実はキャビネット製作なんです。木工機械を使いますから、ほこりも出ます。なので、自分で作る気はありませんでした。最初はキャビネット製作は外注するつもりだったんです。木工の部分だけ外注で、トーレックス張りは自分でやろと考えていましたが、キャビネット業者に頼んででき上がってきた製品が、僕の理想をはるかに下回るできだったんです。

そこで、キャビネット業者にクレームの電話を入れました。そしたら「じゃー金はいらねーから、もうやらねーよ」と突っぱねて来たわけです。プライドを傷つけるつもりはなかったのですが、よほど頭に来たのでしょうかね。僕はここをもっとこうして欲しいなどと、伝えたつもりだったのですが。

それから、新高円寺の狭い工房に木工機械を入れました。キャビネットをフィンガージョイントをすることを前提にしていましたから、テーブルソーとフィンガージョインターが一緒に使える機械で加工しキャビネットを作りを始めました。

最初はルーターが無かったので、木材を持って電車で1時間くらいかけてKANJI GUITARの川端くんのところまで行って、ルーター加工をさせてもらってました。

のちにルーターテーブルを導入してからは、キャビネット作りに関するすべての工程は、自分でやれることになりました。

理想のサウンドの追求

ここからはLuck6vの試作を作っている時期のことを話します。

まだ、内部回路がしっかり決まっていない時期に回路を改善してくのですが、その試作アンプが自分の理想しとしているサウンドにならないのです。

アンプのサウンドを決める要素は、スピーカーユニット、プリアンプ回路の定数、電源トランス、整流回路、コンデンサの種類、配線材など、上げだしたらきりがないほどの組み合わせが、そのアンプのサウンドを決めます。

この多くの要素の中からサウンドを作ることになります。

ある日、どうしても納得いくサウンドができずに、夜中に工房から家への帰り道、信号待ちで呆然と立ちすくんでいたら、自分の目から涙が溢れてきてしまいました。

「こんなに頑張ってるのに何でいい音が出せないんだ」

「でも絶対に作ってみせる」

コンデンサの種類を変えたり、スピ―カーユニットを変えたり、パーツの定数を変えたり、電源トランスを変えたりと思いつく限り調整していきました。

24時間アンプのことしか考えていないくらい取りつかれていました。寝ているときも、夢の中でここのパーツを変えてみようとか出てくるんです。

なので、この時期は世の中のニュースとか全然知りませんでした。テレビも全く見ていませんでしたし。

こんな日々をずっと続けて、ついにLuck6vは完成しました。

新高円寺の工房が手狭になってきたので、荻窪のマンションの1階店舗を借りました。ここは木工室を分けることができました。防音室も自作で作りました。塗装するスペースも作りました。作業スペースも広がり、大分やりやすくなりました。

ここでWIN by SHINOS、SW-1、BLACK BIRD 50(佐橋佳幸モデル)、Luck6vアーティストモデル、VTDを作りました。

佐橋佳幸さんと僕(2007年)

WIN by SHINOS

和田唱さんと共にデザイン・開発した初めてのミュージシャンシグニチャー・モデル

数々のアンプを作り出したこの荻窪工房も次第に手狭になって行くころ、スタッフも入れ替わります。そしてSHINOSは、久我山にある岩崎通信機株式会社の敷地内のスペースを借りれることになり、移転しました。

岩崎通信機株式会社(IWATSU)はオシロスコープなども作っている企業で、SHINOSでもIWATSUのオシロスコープを使っています。90平米のスペースに作業場スペース、防音室、木工スペース、塗装ブース、倉庫を作り、アンプ製造をしています。

久我山に移転してからは、SILENT-AMP、SILENT-SPEAKERなどを作りました。エフェクターペダルBLUE TONGUEも発売を開始しました。そして、海外のミュージシャンも使用してくれるまでに広がってきました。

Carl Verheyen(Supertramp)

Keith Scott

Jeff Kollman

Paul Pesco

Jay Graydon

2018年1月には、世界最大の楽器ショーのNAMM SHOWにも出展しました。

日本では多くのトップミュージシャン達がSHINOS AMPを愛用してくれています。今後、SHINOSは日本に留まらず、世界のトップミュージシャンからも愛用されるようなアンプメーカーになっていきます。

目指せ!ブティックアンプ世界一!!

SHINOS 代表・Master Builder 篠原勝

LINEで送る
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です