CROSS BRIDGEがお届けする日本のトップミュージシャンを支えるトップギターテクニシャンを紹介するYouTube番組「The SAMURAI Road Crew」。
第6回目は、X JAPANのPATAさんのギターテクニシャン、斉藤透さんにご登場いただきます。
The SAMURAI Road Crew :PATA(X JAPAN、Ra:IN: )
Guitar Tech: 斉藤透(Toru Saito)
MC:ITSUKA
Videography:AMP UP
Powerd by CROSS BRIDGE
General Produce SHINOS
The SAMURAI Road Crew PATA Gallery
斉藤さんとPATAさんとの出会いは、1991年の「Violence In Jealousy Tour」。以来30年超、斉藤さんはPATAさんのギターテクニシャンを担当しています。PATAさんはギターによくニックネームをつけるのだそう。今回はそんなPATAさんが愛用するさまざまなギターを、貴重な秘話とともに紹介してくれました。
Gibson ’55 Les Paul Standard
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まずは、PATAさんファンにはお馴染みの55年ギブソンゴールドトップ。入手時にはすでに、ハムバッカー、テールピースに改造されていた。色もゴールドに塗られていたが、剥がれている箇所も多く、リフィニッシュするつもりで塗装を落としたところ、カッコいいじゃん!ということに、そこでついた愛称が「ハゲ」。PATAさんは基本リアピックアップで、ソロの部分でたまにフロントに切り替える。
Gibson ’75 Les Paul Custom
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続いてアマチュア時代から使っている75年ギブソンレスポールカスタム、通称「黒カス」(常務と呼ばれていたころも)。「ハゲ」とともにPATAさんが長年メインで愛用しているギター。PATAさんは、白(通称「白カス」)ほか何本もカスタムを所有している。
Gibson ’59 LesPaul Standard
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そして、PATAさんといえばこちら! 59年レスポール、通称「1号さん(またの名を本妻)」。現在は家が買えるほどの高額ヴィンテージギター。あまりの貴重さに、いまはライヴでは使用されてないが、レコーディングでは現役。特にソロの場面では必ずと言っていいほど使われていて、レスポールならではの艶のある音は、弾いていて最高に気持ちがいいのだそう。ちなみに最後にステージに登場したのは、2008年のX JAPAN東京ドーム再結成コンサートとのこと。
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さらに、PATAさんがライヴで使っている選りすぐりのギターを紹介してくれた。
Gibson EDS-1275
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90年代のEDS-1275ダブルネック。テイルピースの位置を変更してジミー・ペイジ仕様にし、12弦側をバーストバッカーにするなどピックアップ関係はすべて交換。レコーディングで12弦がほしいときや、Ra:INのライヴで使われていたが、重いので最近はステージでは使わないようにしているのだそう。
Gibson ’76 Les Paul Custom
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ワインレッドの76年カスタム。メイプルネックのため、PATAさんには珍しく重いギター。リアピックアップだけトムホームズ453にカスタマイズされている。X JAPAN再結成後によく演奏されていた「JADE」などで使われていた。
Burny PATA MODEL
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そしてバーニー2本。1本目はコリーナのエクスプローラー。95年ごろ、フェルナンデスから発売されたPATAモデルのエクスプローラーで、1本だけPATAさん用にコリーナ材でつくられたもの。カスタム同様トムホームズのピックアップを搭載。
Burny hide MODEL proto type
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もう1本のバーニーは、hideさんのコリーナモデルとして発売された「くじら」のプロトタイプ。X JAPANの2014年に開催された米・ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンライヴの前に、フェルナンデスからPATAさんにプレゼントされた。PATAさんは「松本(hideさん)も一緒に連れて行かねぇとダメだ」と、マディソン・スクエア・ガーデン公演や2017年英・ロンドンのウェンブリー公演にも持参し実際にライヴでも演奏された。
Takamine
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ほかにも貴重なギターはたくさんあるのですが、最後にアコースティックギターの中から1本。ファンのみなさんもよく目にしたことがあるタカミネだ。「hide Birthday Party 2021」で「Hurry Go Round」のアコースティックギターセッションでも使用された。
PATAさんは極力ギターの持ち替えはしたくないタイプで、X JAPANの場合は楽曲によってチューニングが違うことが多いため4、5本使っているが、Ra:INではダブルネックがなければ、レギュラーチューニングとドロップチューニングの2本ぐらいだそう。
Marshall
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PATAさんといえばマーシャル。もともとマスターボリュームがない年代のものだが、手に入れたときには改造され、マスターボリュームもついていた。基本このオールドマーシャルの2台使い。歪ませるほど低音が濁る傾向にあるため、2台を分担し、主旋律を上の最古参のマーシャルのほうで、もう1台でボヤケがちな低音を補正。常に2台をミックスで鳴らすことで、PATAさんの太いミッドの音が出やすいのだそう。
エフェクター
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エフェクターは、必要最低限かつシンプル。初期型のフェイズ100、MK.4.23のブースター、ディレイ。
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そして、PATAさんの足元には古いVOXワウ。基本的に歪みはアンプ側のみでつくられている。ソロのときに若干音量をアップさせるためにブースターを入れるというかたちで、歪みを足すためには使われてない。エフェクターのスイッチングは斉藤さんが行う。
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デシメーターのノイズリダクション。アンプで歪みがつくられているため、X JAPANではノイズカットが必須。いろいろ試した結果、音への影響が少ないことから採用された。
弦・ピック
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PATAさん愛用は、ラベラHRS-010-048。渡米して行われたアルバム「ART OF LIFE」(1993年リリース)のレコーディングの途中から使用。それまではダダリオの011-049を使っていたが、特に1弦がチョーキングしにくいというのがあり、現地の楽器店で偶然見つけた。PATAさん曰く「ダダリオとアーニーの中間ぐらい」。ダダリオほどは明るくならず、アニーボールよりチューニンングが安定しやすくていいのだそう。
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ピックは、ジムダンロップのジミー・ペイジタイプといわれている0.73mmのナイロンピック。アコースティックギターの際は少し固めのものを使うこともある。PATAさんはもともとナイロンピックを希望していたが当時日本では入手困難だった。それがラベラHRSの弦と同様、「ART OF LIFE」の米国レコーディングのときに現地のギターセンターで入手。以来ずっと使っている。
最後に
ギターテクニシャンとしてPATAさんを30年以上支え、X JAPANとともにその激動の時代を歩んできた斉藤さん。X JAPANの再びのリスタートを待ち望むひとりでもある。言わずと知れたPATAさん愛用のギターの近影、さらにPATAさんと斉藤さんが積み重ねてきた時間と深い信頼感をも感じられる、貴重なインタビューとなった。