The SAMURAI Road Crew : 鈴木茂(Shigeru Suzuki): Guitar Tech 佐野亨(Toru Sano)

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CROSS BRIDGEがお届けする日本のトップミュージシャンを支えるトップギターテクニシャンを紹介するYouTube番組「The SAMURAI Road Crew」。

第五回目は、伝説のバンド「はっぴいえんど」のギタリスト鈴木茂さんのギターテクニシャンである佐野亨さんに登場して頂きます。

鈴木氏の使用機材や人柄、そして”ギターテック界のレジェンド”的な存在である佐野さんに、ギターテクニシャンとして一番大事に思われていることなどお話しして頂きました。

The SAMURAI Road Crew :鈴木茂(Shigeru Suzuki)

Guitar Tech: 佐野亨(Kiyoshi Toru Sano)

MC:ITSUKAAMP UP オーナー

Videography:AUSTIN Studio

Powerd by CROSS BRIDGE

ギターテック界のレジェンド的な存在

昨年、デビュー50周年を迎えた伝説のバンド「はっぴいえんど」のギタリスト鈴木茂のギターテクニシャンである佐野氏。数々の有名アーティストのサポートギタリストとしても活躍する鈴木氏だが、正式に佐野氏がギターテクニシャンを担当し始めたのは2014年頃の矢野顕子さんのツアーから。

現在62歳である佐野氏は日本のギターテックの中でもキャリアが長くレジェンド的な存在。日本で担当されたのは増田俊郎さん、松木恒秀さん、桑名正博さん、そして鈴木茂さんの4名くらいであり、海外アーティストではロベン・フォード、リー・リトナー、バズ・フェイトン、マイルス・デイヴィス等とも仕事をされており親交が深い。デイヴィッド・T・ウォーカーは「茶飲み仲間」だと言う。

The SAMURAI Road Crew Shigeru Suzuki Gallery

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ALL IN ONE=よろず屋

佐野氏の経営する会社。ALL IN ONEとは「よろず屋」の意味。

大量の機材が並ぶ。鈴木氏もよく機材のチェックに訪れるそう。

鈴木氏の使用機材について紹介してもらった。

Fender Stratocaster

先ずはトレードマークであるフィエスタレッドのフェンダーストラトキャスター。今回紹介してくれたのは、ご本人の手元にあるオリジナルをベースとして再現され、去年Fender Custom Shopからリリースされたシグネチャー・モデル。

ポリ塗装で全く滑らなかった為、ネック裏が相当削られている。オリジナルのネックも元々太かったが、かなり削った跡があるそうだ。オリジナルの方が更に細くて軽いが、製品化にあたりその辺りも忠実に再現されている。


JOURNEYMANレリック加工で大切に扱われつつ使い古されたような細かな傷も再現され、軽くクラックも入っている。
電気系統では、電気的な知識もある鈴木氏が、回路的な変更ではなくコンデンサーをすぐに変えられるようにして、どれが一番良いかずいぶん選んだそうだ。

Fender Telecaster

続いて紹介してくれたのはフェンダーテレキャスター。最近は使っていないそうだが、独特の音でかなり弾き込まれた音がする。

鈴木氏は、テレキャスではリアのピックアップのみでフロントは全く使わない。ストラトでは3ピックアップ、いろんなポジションで使っている。たまにトーンを絞ったりしているとのこと。

Gibson Firebird

次に紹介してくれたのはギブソンファイヤーバード。ストラトと並んで登場回数が多いそうで、はっぴいえんどの「花いちもんめ」でも使用されている。

それとは別にもう1本ファイヤーバードを紹介してくれた。ボディは一緒だがこちらはミニハムバッカータイプでアーム付き。こちらの方が「カキン」という感じの音がするそうだ。

2本とも元々アームは付いていたが、板バネのタイプはどうしても音が狂うため、1本は外して、たまたま手に入ったギブソンのダブルネック用のテイルピースを付けたそう。ブリッジも変えてハイブリッドな感じになっており、こちらの方が迫力あるキャラクター。

Gibson N-225

次はギブソンN-225。ギブソンのミッドナイトスペシャルの後継機種だ。

ホロウボディで中が空洞のため軽い。ダウンチューニングの時は鈴木氏はこれを使うそうだ。ダウンチューニング用なので、弦は09ではなくレギュラーの10-46のまま使っている。普通のギターでは出ないような音がして、ちょっと枯れたきらびやかさがあると言う。

Gretsch Silver Jet

最後はGretschのSilver Jet。

ド派手な見た目で、セミホロウなのでこちらも軽い。ピックアップはTVジョーンズのフィルタートロンの音が大きすぎため、80年代位のレイ・バッツのフィルタートロンに変えてある。

弦・ピック

鈴木氏の弦を押さえる左手のタッチはソフトで、右手のアタックもおそらく強くはないそうだ。その為、使用しているおにぎり型のミディアムピックも削れない。

使用弦は基本はアーニーボールのオレンジパックだが、4弦だけ26から24に変えて使っている。09でロー弦が太いのが欲しいが、09で24を含んでいるパックが無い為、このようなセットにしているそうだ。

エフェクター

続いて鈴木氏のシステムセッティングについて紹介してくれた。

コンプレッサーは特に重要で常にかかっている状態。クリーンはコンプレッサーとブースターが中心。これらありきで歪み系や空間系を色々ブレンドして音を作っていくのが基本。


このコンプレッサーとブースターは鈴木氏が自作しているオリジナルのもの。


通常のロック系のフィードバックと少し違ってコンプレッサーの分だけ奥行きがある。ブースターで増幅しているので、なおさら迫力があるそうだ。

これらブースターは鈴木茂オフィシャルサイトから購入可能。

真空管にもこだわりがあり、古いものを使っていて、足りなければ仕入れて絶対的に本数を持っている。

ワウも古いものを使用。コーラス・ディレイも基本はかけっぱなしだそうだ。

このシステムにしてからはまだ3年ほど。エフェクターのセッティングは一緒で、システムを変えるのではなく、ギターのキャラクターで音を変えている。それぞれのギターで全く違う音がするそうだ。ただ、どんなギターで弾いてもどこかに必ずキラッとした感じがあるのが特徴。

アンプ

アンプについても聞いてみた。

鈴木氏は2つのボリュームペダルで3台のアンプを制御している。

1つは真ん中のメインアンプに繋がっており、ストレートな音+ディレイ音が出ている。もう1つはステレオボリュームペダルでLRの2つのアンプに繋がっており、コーラス音が出ている。

真ん中のメインアンプは両方のチャンネルを使って、ドライブチャンネルとクリーンチャンネルに分けている。本来メインセットはツインリバーブを使っているが、ドライブにVOX・クリーンにツインリバーブを使うこともあるそうだ。コンプレッサーは3台使用しているが、2台だったり1台だったり、ミックスして必ずどれかがかかっている状態。

これだけの古いビンテージ機材が揃っていて、これ以外のセットもほとんど60年代の為、佐野氏がギターテックとして着いたばかりの頃は音が出ない等のトラブルはしょっちゅう起こっていたそうだ。接点をいじったり色々試してなんとか音を出していたと言う。

鈴木氏の人柄について

鈴木氏は酒もタバコもやらず、非常に真面目な方。佐野氏は真逆のタイプ。彼は普段はとにかくアイディアを探していて、何かあれば試したがる。鈴木氏のアイディアを佐野氏がアレンジする等、技術的な部分でいつも相談して通じ合っている。

ギターテクニシャンを目指している若者に向けて

ギターテクニシャンになる上で一番大事なことは、何よりも経験。知識は後から付いてくるものなので、現場で怒られながらもとにかく場数を踏むことが大事だと思う。

ギターテクニシャンになって一番良かったなと思ったのは「良い演奏が聴けた時。それ以外無いですね。」

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